二次性副甲状腺機能亢進症

監修:兵庫医科大学 循環器・腎透析内科学講座 教授 倉賀野 隆裕 先生

治療や心がけること

治療法1)2)

透析患者さんにおいては、リン・カルシウム・PTH をトータルで管理することが重要です。血清リン濃度を 3.5~6.0 mg/dL、血清補正カルシウム濃度を 8.4~10.0 mg/dL、 iPTH を 60 pg/mL 以上 240 pg/mL 以下の範囲を目標に、維持するようコントロールします
またSHPTへの変化はCKD(慢性腎臓病)の早期から始まっており、早期発見と状態に応じた適切な治療介入が大切です。

※出典
日本透析医学会:慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン. 日本透析医学会雑誌,45(4):301-356, 2012

治療法

●栄養管理(食事療法)
リンを多く含む食品を控えるよう、患者さんに栄養指導を行います。

●リンの管理(リン吸着薬)
食事療法を行っても血中のリン値が高い場合、経口リン吸着薬を服用します。

●活性型ビタミンD製剤やカルシウム受容体作動薬の投与
腎臓で活性型ビタミンDの産生が低下するため、活性型ビタミンD製剤を補います。
一方で高カルシウム血症の患者さんには、カルシウム受容体作動薬を投与し、副甲状腺ホルモンの過剰な分泌を抑制することで、血中のカルシウムやリンを抑えます。

栄養

●透析処方の見直し(PTH)
iPTH値が目標の 60~240 pg/mL内で管理できていない場合、十分な透析を行う他、透析液のカルシウム濃度の調整を検討します。

●副甲状腺摘出術(PTx)
重度の二次性副甲状腺機能亢進症(PTH>500 pg/mL)がある場合、副甲状腺摘出術(PTx)を検討します。4つある副甲状腺のうち、腫大しているもののみを摘出する「亜全摘出術」と、全摘出して一部を前腕などに移植する方法があります。手術後は、カルシウム補充療法が必要です。

患者さんができる予防とケア1)2)

●適度な運動を心がける
体を動かさない状態が続き、骨への物理的な負荷が減少すると、骨の形成が低下し高カルシウム血症につながりやすくなります。日常的に適度な運動を行うことが大切です。

適度な運動

●リンを多く含む食品を控える
SHPTに進展しやすい高リン血症を防ぐため、リンを多く含む食品を控えます。リンは肉・魚・卵・乳製品などに多く、また加工食品にも食品添加物(無機リン)として含まれていることが多いため摂りすぎないように指導します。

リンを多く含む食品

check! 高齢の患者さんは特に注意3)4)

透析患者さんにおける血管石灰化の危険因子の一つに「加齢」があげられるように、高齢になるほど血管石灰化が高頻度でみられます。透析期間が長期化している場合も多く、カルシウムの過剰負荷による高カルシウム血症をきたす例もみられます。また高齢者は、基礎疾患に糖尿病や高血圧症、心血管疾患の既往がある方が多く、すでに臓器障害を合併しているケースが少なくありません。そのため、PTH値を正確に評価し、二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)の管理・治療を行うことが特に重要です。基礎疾患がある場合、食事療法や運動療法が推奨されますが、厳格な食事療法は栄養状態の悪化を招き、運動療法は骨折の危険性もあるため、医師や医療スタッフに相談しながら行うことが必要です。

●透析患者における血管石灰化の危険因子
①年齢
②透析期間
③糖尿病
④重度の高血圧
⑤高リン血症
⑥カルシウム・リン積
⑦カルシウムを含むリン吸着薬の過剰摂取

出典
日本透析医学会:慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン. 日本透析医学会雑誌,45(4):323, 2012

患者

参考文献
1)小川洋史 岡山ミサ子 宮下美子 監修:透析ハンドブック, 第5版, 医学書院, 2018
2)深川雅史 監修:こんな時どうすれば!? 透析患者の内科管理コンサルタント, 金芳堂, 2017
3)飯田喜俊 椿原美治 編:高齢透析患者治療とケアのための透析療法Q&A, 医歯薬出版, 2014
4)上月正博 編著:腎臓リハビリテーション, 第2版, 医歯薬出版, 2018