2012年の農林水産省の調査では、農作業をしている人はしていない人よりも、喜びや楽しみなど生きがいを感じており、農作業は健康に効果があると実感していることが示されています。加えて、スポーツやウォーキングなど他の運動よりも続けやすいと考えている人が多いことも分かっています。
肉体的にも精神的にも健康に良い影響を与え、適度な運動としても続けやすく習慣化しやすい農作業。まずは、比較的手軽なプランター菜園から始めてみることをおすすめします。
あなたは現在、どの程度生きがい(喜びや楽しみ)を感じていますか。(%)
農作業は健康に効果があると思いますか。(%)
農作業は他の運動(スポーツやウォーキングなど)と比較して、続けやすいと思いますか。(%)
平成24年度農林水産省委託調査 農作業と健康についてのエビデンス把握手法等調査報告書. 2013.より
心と身体、健康に良い農作業
仲間と役割を分担して作物の世話をし、収穫をする一連の農作業には、身体能力を高め、心に安らぎをもたらす効果が期待されています。ここでは、心と身体の健康に良い影響を及ぼす農作業のメリットと事例をご紹介します。
医療業界における農作業の導入事例
昨今、病院でのリハビリ治療に農作業を取り入れる動きが広がっています。地域の農家や企業と連携して大規模に行い、医療効果を測る研究も進みつつあります。
ここでは、いくつかの取り組み事例をご紹介します。
京都大原記念病院グループ 京都大原記念病院
京都市左京区の京都大原記念病院では、「グリーン・ファーム・リハビリテーション®」として院内に整備した農地で、農業を取り入れたリハビリを行っています。患者さんには前頭葉機能の向上や日常生活の運動機能の改善が見られ、自発性も上がっています。また、リハビリの必要性を理解しにくい認知症の高齢者の方が、楽しく農作業に取り組む姿も認められています。
従来のリハビリにこれまで前向きになれなかった患者さんも、「今日はあの野菜を収穫しよう」など明確な目標があれば、意欲をもって取り組むことができるため、農作業は効果的なリハビリテーションになることが期待されています。
医療法人財団緑秀会 田無病院
東京都西東京市の田無病院では、身体機能を高めるための作業療法として農作業を活用しています。精神疾患だけでなく、脳血管障害や認知症の患者さんの作業療法に農作業を取り入れたところ、運動機能の改善が見られた方が多く、しゃがむ、腰をかがめるなど室内でもできなかった動作が、農作業では自然にできるようになった方もいました。
寺島なすや品川ねぎなど、「江戸東京野菜」と呼ばれる地元の特別種を育てており、収穫した野菜は病院食として皆で食べたり、配ったりするそうです。何かを作ること、それを誰かに喜んでもらえることが、患者さんのやりがいや生きがいとなり、心身の健康が保たれています。