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1型糖尿病とは

糖尿病とは、「インスリン」という血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)を下げるホルモンの分泌・作用が十分でないため、血糖値が高くなっている状態のことです1)。1型糖尿病は、このインスリンを分泌する膵臓の細胞(膵β細胞)が破壊され、インスリンが不足することで発症します。その原因から、外敵から身を守るための防御反応(免疫)が異常を起こして膵β細胞を破壊してしまう“自己免疫性”と、それ以外の原因不明な“特発性”に分類されます。1型糖尿病の原因のほとんどが自己免疫性です。また、治療は基本的にインスリン療法(注射によるインスリンの補充)となります。インスリン療法を適切に行うことによって、健康な人と同じような日常生活が送れますし、糖尿病の合併症を予防し、その進行を防ぐことができます2)

1型糖尿病は、さらに進行の速さによって、劇症、急性発症、緩徐進行の3つに分類されます3)

進行の速さからみた分類

劇症1型糖尿病 最も急激に発症し、早期からインスリン治療が必要になります。
早期にインスリン療法が行われない場合、糖尿病ケトアシドーシスという重篤な状態に陥るため、注意が必要です。
重症化するスピードが速いため、血糖値は高くてもHbA1c値は低い場合があります。
劇症の多くは自己免疫の関与が不明であり、通常、特発性に分類されます。
急性発症1型糖尿病 1型糖尿病で最も多いタイプです。
発症してから数ヵ月位で、インスリン療法が必要となります。
血液検査で自己抗体を認めることが多く、大半が自己免疫性に分類されます。
緩徐進行1型糖尿病 半年~数年かけてゆっくりと進行していくタイプです。
初めはインスリン療法を行わなくても飲み薬で血糖値が正常化するため、経過中の血液検査で自己抗体が検出され、実は緩徐進行1型糖尿病だったと分かることもあります。
自己免疫性に分類されます。

糖尿病ケトアシドーシスとは
インスリンが不足すると、エネルギー源である糖が体内に取り込まれなくなります。糖の代わりのエネルギー源として脂肪が使われますが、この脂肪が分解されてできるのが「ケトン体」という物質です。ケトン体は、通常、血液中にほとんど存在しません。一般的に、血液は弱アルカリ性(pH=7.35~7.45)ですが、このケトン体が多くなると、血液が酸性に傾いた状態になります。これが、ケトアシドーシスです。ケトアシドーシスでは、口渇、多飲、多尿、体重減少、全身倦怠感などの糖尿病に典型的な症状が急激に起こります4)

監修:東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科

教授 山内 敏正 先生

(2024年3月作成)