糖尿病とは、「インスリン」という血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)を下げるホルモンの分泌・作用が十分ではないため、血糖値が高くなっている状態のことです(図1)1) 。インスリンは通常、膵臓という臓器から分泌されます。2型糖尿病の発症には、このインスリンが出にくくなっていること(分泌低下)と、インスリンが効きにくくなっていること(作用不足)が関係しています。
また、食べ過ぎ(特に脂肪分が多いもの)、運動不足、肥満やストレス、加齢なども関わっています。糖尿病は放置すると全身にさまざまな影響が出てきます。
インスリン分泌低下2)
インスリンは血糖値を適正に維持するため、血糖値に合わせて分泌量が変わります。食事摂取によって血糖値が高くなった場合、インスリンの分泌量は増加します。2型糖尿病のある方では健常人に比べ、食事摂取後のインスリン分泌のタイミングが遅く、量が足りなくなり、空腹時の分泌量も低下して、血糖値が下がりにくくなります。この原因として、インスリンを分泌する細胞(β細胞)の働きの低下、β細胞量そのものの減少の両方が考えられます。
インスリン抵抗性3)
インスリンは、主に、血液中のブドウ糖を筋肉や脂肪組織などに取り込んで血糖値を低下させます。しかし、血液中にインスリンが存在していても、血糖値が高いまま(低下しない)状態のことをインスリン抵抗性といいます。これはインスリンが作用しにくくなっている状態であり、肥満や運動不足などが原因と考えられています。
- 清野裕ほか:糖尿病. 55: 485-504, 2012
- 門脇孝ほか 編:糖尿病学. 西村書店, p209, 228, 2015
- 門脇孝ほか 編:糖尿病学. 西村書店, p207, 2015
監修:東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科
教授 山内 敏正 先生