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2型糖尿病の食事療法

適正なエネルギー摂取量について1)

糖尿病のある方は、年齢、肥満度、身体活動量、病態、ご自身の治療実施状況を考慮し、その人に適したエネルギー摂取量を決めます。 エネルギー摂取量は目標体重とエネルギー係数を用いて算出します。

目標体重(kg)の目安

目標体重は、以下の式([身長(m)]2×BMI)から求めます(図1)。目標体重は年齢によって異なり、一定の幅があります。

図1:目標体重の目安
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目標体重(kg)の目安

75歳以上の後期高齢者では現体重に基づき、フレイル、(基本的)ADL**低下、合併症、体組成、身長の短縮、摂食状況や代謝状態の評価を踏まえ、適宜判断します。

  • Body Mass Index=体重(kg)/[身長(m)]2の略で、肥満度の指標です。
  • **Activity of Dairy Livingの略で、日常生活動作(着替え、食事、移動、トイレ、風呂など)を表します。

身体活動レベルとエネルギー係数(kcal/kg目標体重)の目安

身体活動とは、安静にしている状態より多くのエネルギーを必要とする動作のことです。例えば、高齢者のフレイル予防では、エネルギーが必要ですので、より大きい係数に設定できます。また、肥満で減量を図る場合には、多くのエネルギーは必要ありませんので、小さい係数に設定できます。実際は、下記①~③を参考に柔軟に係数を設定します(表1)。

表1:エネルギー係数の目安

身体活動レベルとエネルギー係数(kcal/kg目標体重)の目安
①軽い労作(大部分が座位の静的活動) 25~30
②普通の労作(座位中心だが通勤・家事、軽い運動を含みます) 30~35
③重い労作(力仕事、活発な運動習慣があります 35~

エネルギー摂取量の目安

エネルギー摂取量は、以下の式で求めます(表2)。

表2:エネルギー摂取量の目安

エネルギー摂取量の目安
エネルギー摂取量(kcal/日)=目標体重(kg)※※×エネルギー係数(kcal/kg)

※※原則として年齢を考慮にいれた目標体重を用います。

エネルギー摂取量決定後は定期的に体重を測定し、目標体重に近付いているか確認してみましょう。

糖尿病治療における世代別のギアチェンジ2)

近年では20歳から60歳の現役世代の過剰なエネルギー摂取による肥満症、糖尿病、脂質異常症、高血圧などの社会環境病が予防すべき問題として重要視されてきました。一方、75歳以上の後期高齢者においては必要な栄養素が不足している低栄養などが原因で起こるフレイルによる健康障害への影響も大きいといわれています。このような背景から、最近では65歳から70歳前後での社会環境病予防からフレイル・サルコペニア予防へのギアチェンジが必要と考えられています(図2)。

図2:カロリー摂取に関する世代別の考え方の「ギアチェンジ」
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カロリー摂取に関する世代別の考え方の「ギアチェンジ」

食事療法の効果を高めるためのポイント

  • 野菜など食物繊維に富んだ食材を主食より先に、よく噛んで食べることで、食後の高血糖の改善が期待できます3)
  • 朝食、昼食、夕食は規則正しく摂りましょう3)
  • 高齢者で栄養状態が良くない方はタンパク質を多めに摂りましょう4)

1日の血糖値の推移

同じ食事量で1日2食にすると、1日3食規則正しく食べるよりも食後血糖値は上がりやすくなります。そして、食後高血糖はインスリンの分泌量が減る要因になります(図3)5)

図3:1日の血糖値の推移(イメージ図)

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規則正しく1日3食した血糖値
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朝食抜き1日2食の血糖値
  • Adapted with permission from Jakubowicz D, Wainstein J, Ahren B, et al.: Fasting Until Noon Triggers Increased Postprandial Hyperglycemia and Impaired Insulin Response After Lunch and Dinner in Individuals With Type 2 Diabetes: A Randomized Clinical Trial, Diabetes Care 2015; 38(10): 1820–1826 (doi.org/10.2337/dc15-0761). Copyright 2015 by the American Diabetes Association.

タンパク質摂取のポイント

高齢者(65歳以上)が1日に必要なタンパク質の量は体重1kgあたり1日1gです(図4)6)

図4:高齢者(65歳以上)が1日に必要なタンパク質の量
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高齢者(65歳以上)が1日に必要なタンパク質の量

手のひらでわかるタンパク質の量(目安)

手のひらにのる程度の分量の食品に含まれているタンパク質の量(目安)を覚えておくと、摂取が必要なタンパク質の量を求めるのに便利です(図5)7)

図5:手のひらでわかるタンパク質の量(目安)
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手のひらでわかるタンパク質の量

食事の内容や摂取量に関すること、あるいはタンパク質制限が必要と言われた方は、主治医・(管理)栄養士など医療従事者に相談し、アドバイスに従ってください。

  • 日本糖尿病学会 編・著:糖尿病治療ガイド2022-2023. 文光堂, p49-50, 2022より作成
  • M Kuzuya: Geriatr Gerontol Int. 21: 5-13, 2021改変
  • 日本糖尿病学会 編・著: 糖尿病診療ガイドライン 2019. 南江堂, p46, 2019
  • 日本糖尿病学会・日本老年医学会 編・著: 高齢者糖尿病治療ガイド2021. 文光堂, p42, 2021
  • Jakubowicz D et al: Diabetes Care. 38: 1820-1826, 2015
  • 「日本人の食事摂取基準」策定委員会:日本人の食事摂取基準(2020年版)p114より作成
  • 文部科学省: 日本食品標準成分表2020年版(八訂)

監修:東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科

教授 山内 敏正 先生

(2024年3月作成)