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慢性腎臓病(CKD)の食事療法

食事療法の概要

慢性腎臓病(CKD)の食事療法は、治療の重要な柱の一つです。主な注意点は以下の通りで、進行すると制限が多くなります。

ステージ別 食事療法の概要1,2,3)

ステージG1~G2
  • 食塩:1日の摂取目標6g未満
  • エネルギー:肥満がある場合は減量のため制限し、肥満がない場合は適正なエネルギー量を摂取する
    1日あたりの摂取目安:標準体重(kg)×25~35kcal(指示がある場合はそれに従ってください)
    ※標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22で計算します。
ステージG3~G5
  • 食塩:ステージG1~G2と同じ
  • エネルギー:ステージG1~G2と同じ
  • たんぱく質:指示された量を守り、過剰に摂取しない
    1日あたりの摂取目安:
    ステージG3a=標準体重(kg)×0.8~1.0g
    ステージG3b~G5=標準体重(kg)×0.6~0.8g
  • カリウム:血清カリウム値が高ければ制限
    1日あたりの摂取目安:
    ステージG3b=2,000mg以下
    ステージG4~G5=1,500mg以下

食事療法の具体的な内容は、病気の進行度や合併症、生活状況などにより一人ひとり異なります。必ず主治医・管理栄養士に相談し、的確なアドバイスを受けてください。

食塩摂取について

腎機能低下と食塩の過剰摂取

食塩を過剰に摂取すると血液量が増加します。腎機能が低下していると水やナトリウムなどの電解質をうまく調節できず、むくみや高血圧などをきたします。高血圧は腎機能が低下する要因になります。さらに食塩の過剰摂取は、一部の降圧薬の効果を減らしてしまうことも知られています3)

摂取目標

食塩の摂取はどのステージの患者さんでも1日6g未満を目標にします3)
この目標値は、日本人の平均摂取量(1日約10g)4)からするととても少なく感じられるかもしれませんが、実はWHO(世界保健機関)が一般の人向けに推奨している食塩摂取量(1日5g未満)よりも高い設定です。患者さんだけでなくご家族の皆さんも、食品の選び方や調理の仕方、調味料の使い方を工夫して、食塩摂取量をコントロールしましょう。

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塩、醤油、味噌

エネルギー摂取について

エネルギーとは

私たちは体温の維持や生命活動に必要なエネルギーを、主に三大栄養素である炭水化物、脂質、たんぱく質からつくり出しています。
エネルギーの必要量は、慢性腎臓病(CKD)の有無には関係なく、年齢、性別、身体活動度によって決まります2)

摂取過剰への注意

エネルギーの摂取が消費を上回ると、余った分は体脂肪として蓄積されます。体脂肪が増え過ぎた状態が肥満です。肥満によって糖尿病、高血圧、脂質異常症などが引き起こされると、それが慢性腎臓病(CKD)を進める要因になるとみられています3)
肥満の人は、3ヵ月で現在の体重の5%減を目標にするとよいとされています5)。主食の量を見直し、間食や、甘い飲料、油脂類を多く使う料理などの量と頻度を減らすことから始めましょう。

摂取不足への注意

エネルギー摂取が不足すると、からだに蓄えている脂肪や、筋肉からたんぱく質を分解してエネルギーがつくり出されます。腎機能が低下している状態では、たんぱく質を使った後の物質が腎臓で処理しきれずに、からだに溜まってしまいます。これではたんぱく質を過剰に摂取したときと同じような状態になり、たんぱく質制限の効果がなくなってしまううえ、からだの筋肉量が減ってしまいます。
ステージG3a~G5の患者さんで、たんぱく質摂取の制限がある場合は、炭水化物や脂質の摂取量を増やし、エネルギーを確保する必要があります。

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パン、油、お菓子

たんぱく質摂取について

腎機能低下とたんぱく質の過剰摂取

たんぱく質を過剰に摂取すると老廃物も増えますので、腎臓の糸球体はろ過量を増やして対応します。腎機能が低下した状態では処理が追い付かず、たんぱく質が尿中に漏れ出ます。また、このように腎臓に負担がかかれば糸球体の障害も進みます。さらに腎臓病が進行すると、老廃物が体内に蓄積し、尿毒症などの症状を引き起こすようになります。

摂取目標

たんぱく質は魚介類や肉、卵、大豆や大豆製品などだけでなく、米や小麦などにも含まれます。毎日何をどのくらい食べたらよいか、主治医からの指示のもと管理栄養士に相談して決めていくとよいでしょう。ご自身では気付かなかった食品の選び方に出会えるかもしれません。
また、筋肉量が減少している場合、たんぱく質を制限しすぎると、さらなる筋肉量の減少を招きますので、適正量を摂取してください。

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魚、肉、卵などのタンパク質

カリウム摂取について

野菜類や果物も食べましょう

カリウムは血圧低下に役立ち、腎機能障害の進行を抑える可能性があることが知られています6)。カリウムは野菜類(いも類、きのこ類、海藻類も含める)や果物に比較的多く含まれます。これらは食物繊維やビタミン、ミネラルの供給源でもあるので、ステージG3aまでは積極的に摂取したい食品です。

指示があったら制限

腎機能が低下すると、カリウムが十分に尿中へ排出されなくなり、血中濃度が高くなることがあります。また、服用しているお薬によって高カリウム血症をきたす場合もあります。
摂取制限が必要なときは、主治医や管理栄養士から指示が出ますので、アドバイスに従って食事を工夫してください。

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トマト、人参、芋、バナナなど

治療用特殊食品について

毎日の食生活のなかで、たんぱく質の摂取を抑えて十分なエネルギーを確保するために、治療用特殊食品の利用を考慮してもよいでしょう。慢性腎臓病(CKD)の患者さん向けには、以下のような食品があります2)

たんぱく質調整用食品

通常の食品よりもたんぱく質を大幅に減らしたり、含まないように加工した食品です。
たんぱく質の含有量を減らしたごはん、パン、うどん、そばなど、主食用のものが中心です。主食のたんぱく質をカットできるので、おかずの選択肢が増えます。

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低たんぱくご飯

エネルギー調整用食品

消化吸収がよくエネルギーになりやすい中鎖脂肪酸を含む脂質や、少量でもエネルギーが補給できる甘味料、ドリンク、デザート類があります。

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エネルギー補給食品

食塩調整用食品

塩分を少なくしたしょうゆやみそなどの調味料があります。

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減塩

食事療法では患者さん本人はもちろん、家族も毎日献立を考えて、食べ方を調整する余裕がないときもあります。そのまま食べられるものや加熱するだけのものなど、様々な製品があります。いざというときに備えておくと安心です。
病院の売店や通販でも入手可能ですので、管理栄養士に相談してみましょう。

  • 日本腎臓学会編:日本腎臓学会誌.2014;56(5):553-599
  • 日本腎臓学会監修:慢性腎臓病生活・食事指導マニュアル~栄養指導実践編~.東京医学社,2015
  • 日本腎臓学会編:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023.東京医学社,2023
  • 厚生労働省:令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000687163.pdf(2023年9月参照)
  • 日本腎臓学会監修:医師・コメディカルのための慢性腎臓病生活・食事指導マニュアル.東京医学社,2015
  • 日本腎臓病協会監修:腎臓病療養指導士のためのCKD指導ガイドブック.東京医学社,2021

監修:兵庫医科大学 循環器・腎透析内科学

教授 倉賀野 隆裕 先生

(2023年11月作成)