適度な運動は必要1)
かつては腎臓が悪くなったら安静にすることが治療の一つとして考えられてきましたが、今は適度な運動がすすめられています。腎機能の低下にともない、運動能力や身体活動量が低下する傾向があり、それが患者さんの健康状態や生活の質の低下につながることがわかってきたからです。適度な運動は、身体活動の維持・改善だけではなく、慢性腎臓病(CKD)の進行に関与する血圧、血糖、血中脂質のコントロールにも役立ちます。
運動にあたっての注意点1,2,3)
運動の際は、以下の点に注意しましょう。
主治医に相談
無理をしない
運動中に頭痛や胸痛、冷汗、脱力感などが現れたら、直ちに運動を中止し、主治医に相談しましょう。
適切な水分補給を
運動中や運動後は水分補給をしましょう。
スポーツ飲料には、食塩(ナトリウム)や糖類(炭水化物)が含まれています。主治医や管理栄養士に、あらかじめ摂取方法を確かめておくとよいでしょう。
慢性腎臓病(CKD)患者さんへのおすすめの運動1,2)
運動療法として、有酸素運動、レジスタンス運動、ストレッチなどの柔軟体操の3種類が奨励されています。
有酸素運動
ウォーキング、サイクリング、水泳など長時間継続して行う運動は、筋肉が使うエネルギーを酸素とともにつくり出すことから、有酸素運動と呼ばれています。ウォーキングの最適な強度は、会話しながら歩行ができる程度とされています。
1日20~60分(3~5分間に分けて合計20~60分でも可)を、週に3~5日
- 日本腎臓病協会監修:腎臓病療養指導士のためのCKD指導ガイドブック.P141,東京医学社,2021を参考に作成
レジスタンス運動
一般的に筋力トレーニングともいわれる、筋肉に負荷をかける動きを繰り返し行う運動です。瞬間的な血圧の上昇を避けるため呼吸を止めずに行いましょう。
10~15回の反復を1セットとする。1日20~60分(3~5分間に分けて合計20~60分でも可)を、週に2~3日
柔軟体操
柔軟体操とは、筋のストレッチ(伸張)や関節の屈伸を行う運動のことです。主運動の開始前や終了時に行うと、関節系や循環器系への負担軽減や傷害の予防になります。バランス能力などの身体機能改善などにも効果が期待できます。
週に2~3日
運動を長く続けるコツ3)
最初からがんばりすぎない
運動習慣がなかった人や久しぶりに始める人は、いきなり負荷のかかる激しい運動をすると、ケガをする恐れがあり、疲れや痛みが残る可能性があります。無理なく、徐々に強度を高めていくようにしましょう。
励みになる方法をみつける
歩数の記録をつけたり、運動仲間をつくったりすると、励みになり運動を続けやすくなります。好きな景色のある場所まで歩いて行くこともおすすめです。
日常生活のなかでからだを動かすようにする
エレベーターやエスカレーターではなく階段を使う、少し遠くの店まで歩いて行く、バスや電車は一つ手前で降りて歩くなどを、できる範囲で取り入れていきましょう。
- 日本腎臓リハビリテーション学会編:腎臓リハビリテーションガイドライン,南江堂,2018
- 日本腎臓病協会監修:腎臓病療養指導士のためのCKD指導ガイドブック.東京医学社, 2021
- 日本腎臓リハビリテーション学会:「保存期CKD患者に対する腎臓リハビリテーションの手引き」 https://jsrr.smoosy.atlas.jp/files/2231(2023年9月参照)
監修:兵庫医科大学 循環器・腎透析内科学
教授 倉賀野 隆裕 先生