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慢性腎臓病(CKD)の外科治療

外科治療の種類

慢性腎臓病(CKD)の重症度分類では、腎機能の指標であるeGFRが15mL/分/1.73m2未満の場合に「高度低下~末期腎不全」とされ1)、高度のむくみ、尿毒症、高カリウム血症(不整脈や心停止などを起こすリスクとなる)などを発症しやすくなります。
お薬を使っても症状の改善が見込めなくなると、透析療法や腎臓移植を検討します(図1)。

図1:末期腎不全の治療手段2)
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透析療法、腎臓移植など
  • 日本腎臓学会ほか編:腎不全 治療選択とその実際 2023年版.P.9,2023を参考に作成

透析療法

水・電解質、老廃物を除去する働きを腎臓に代わって人工的に行う治療法が透析療法です。血液を透析の機器(ダイアライザー)できれいにして、からだに戻す「血液透析」と、患者さんの腹膜を利用し、おなかに埋めたチューブを使って透析する「腹膜透析」の2つがあります2,3)。途中で透析方法を変えたり、併用したりすることもできます3)。主治医とよく相談して治療を進めましょう。

血液透析を始める前に

血液透析をするにあたり、まずシャント手術が行われます。透析時は、多くの血液を透析の機器におくり出す必要があります。多くの血液がスムーズに流れるように、太い血管が必要になるので、手首近くの静脈と動脈をつないで太い静脈(シャント)をつくります2,3)。シャントをつくる手術は1時間ほどで、日帰り手術で済むこともありますが、シャントが透析に使えるまで、手術後最低2~4週間かかりますので、手術は計画的に行われます2)

血液透析のしくみ

標準的には透析を行う医療機関に週3回通院し、1回あたり3~5時間かけて血液透析が行われます2)。血液透析では、シャント部に刺した針から、血液がダイアライザーにおくられます。ダイアライザーは細い管状の透析膜を束ねた透析器で、細い管の中には血液が、また、その周囲には透析液が流れています。血液中の余分な水分や老廃物などは透析液側に移動して取り除かれます2)。きれいになった血液は、シャントから体内に戻ります2,3)図2)。

図2:血液透析の仕組み
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シャント部に刺した針から、血液がダイアライザーにおくられます

腹膜透析を始める前に

おなかの中にカテーテルと呼ばれるチューブを埋め込む手術が必要です。手術の方法は従来法と段階的腹膜透析導入法の2つがあります4)。 患者さんは、腹膜透析について理解し、ご自身やご家族が正しく取り扱えるようになることが必要です。通常、その方法は医療機関で教えてもらえます4)

腹膜透析のしくみ

腹膜とはおなかの中の内臓表面や腹壁の内面を覆っている膜で、この膜に囲まれた空間を腹腔といいます4)。腹腔内に透析液を入れておくことで、血液中の余分な水分や老廃物などが、腹膜を通して透析液側に移動し、血液がきれいになるしくみが腹膜透析です(図3)。透析液のバッグは、患者さん本人かご家族が交換します。
連続携行式腹膜透析(CAPD)では1日に3~5回交換します4)。自動腹膜透析(APD)の多くは、夜にセットし、就寝中に自動的に透析液が交換され、朝取り外すシステムです2,4)。 医療機関への通院は、安定した状態であれば月1~2回程度です4,5)

図3:腹膜透析のしくみ
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腹腔内に透析液を入れておく
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血液中の余分な水分や老廃物などが、腹膜を通して透析液側に移動する
  • 日本腎臓学会ほか編:腎不全 治療選択とその実際 2023年版.P17,2023を参考に作成

血液透析は、腎臓の機能すべてを代替しているわけではありません。多くの場合、透析療法によって起こる合併症などに対応するためにも、食事療法や薬物療法が必要になりますが、コントロールを続けて、長年にわたり透析療法を受けている患者さんもいらっしゃいます5)

腎臓移植

腎臓移植は、健康な人の腎臓を移植する方法です。腎臓移植には、「生体腎移植」と「献腎移植」の2種類があります2)
腎臓移植のメリットは自由度が高くなること、食事制限の緩和、より安全な妊娠・出産が可能などであり、生活の質は上がります。一方で、移植した腎臓の働きが悪化して再び透析が必要になる場合もあります。また、拒絶反応が起こらないようにするための免疫抑制薬を服用し続ける必要がある、副作用が起こる可能性があるというデメリットもあります6)

腎臓移植の前に

生体腎移植は、2つの腎臓のうち1つを提供・移植する方法です。腎臓の提供者(ドナー)候補者は、事前に移植を実施する医療施設で検査して、移植が可能かどうかを確認します2)。ドナーは、血縁者(親、子、きょうだいなどの親族)の場合もあれば、非血縁者(配偶者、配偶者の3親等の血族)の場合もあります(図42)

図4:生体ドナーとして日本移植学会で認められている範囲
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生体ドナーとして6親等の血族から配偶者の3親等の血族までが日本移植学会で認められている
  • 日本腎臓学会ほか編:腎不全 治療選択とその実際 2023年版.P35,2023を参考に作成

献腎移植は、心停止後や脳死後の方で、生前に臓器提供の意思が書面で確認できている方から、腎臓の提供を受けて実施されます。生前の意思が不明でも、ご家族の承諾がある方から腎臓提供される場合もあります。
献腎移植を希望する人は、(公社)日本臓器移植ネットワークに登録する必要があります6)。日本臓器移植ネットワークのホームページ(https://www.jotnw.or.jp/transplant/wish/#inquiry)には、詳しい手続き方法や全国の移植施設のリストなどが掲載されています6)

移植手術について

腎臓移植の手術では、原則として自分の腎臓は残します。提供された腎臓を骨盤(下腹部)の左右どちらかに入れ、自分の血管や膀胱をつなぎます2)

副甲状腺摘出術

二次性副甲状腺機能亢進症は、透析患者さんの主要な合併症のひとつで、副甲状腺からホルモン(PTH)が過剰に分泌され、血液中のカルシウム濃度を必要以上に上げてしまう病気です。
副甲状腺ホルモン(PTH)が500pg/mLを超える、重度の二次性副甲状腺機能亢進症では、副甲状腺摘出術が施行される場合があります7)。副甲状腺摘出術は、副甲状腺を4つとも全て摘出する場合(一部を前腕などに移植)と、腫大しているものだけを摘出する場合があります。

(2023年11月作成)