変形性ひざ関節症

監修:高知大学医学部整形外科 教授 池内 昌彦 先生

治療や心がけること

変形性ひざ関節症の治療法は、大きく分けて保存療法と手術療法の2つがあります。 多くの場合、保存療法(薬物療法、運動療法、装具療法、物理療法)から始めます。

①薬物療法

痛みをやわらげたり、炎症を抑えたりするために薬物療法を行います。

●外用薬
炎症を抑える塗り薬や貼り薬を使用します。痛みが強いときには坐薬を用いることもあります。

●内服薬
炎症を抑える作用のある非ステロイド性消炎鎮痛薬が最もよく使われます。ただし根本治療ではなく、副作用の懸念もありますので、痛みが軽くなったら使用を中止します。

●関節内注射
関節機能改善剤と、ステロイド注射の2種類があります。関節機能改善剤は、関節の動きをスムーズにするヒアルロン酸を補う注射剤の他、痛みをとったり炎症を沈めたりする消炎鎮痛薬とヒアルロン酸が一緒になったタイプもあります。ステロイド注射は、炎症や痛みが激しい場合に用いられることもあります。

関節内注射

②運動療法

ひざは動かしながら治していくことが基本です。

ひざを動かさないでいると、ひざ関節やひざを支える筋肉の力が低下し、痛みが悪化する原因になります。適切に動かすことで、痛みが軽減し、変形性ひざ関節症の進行をゆるやかにすることが期待できます。適度な運動とともに、食事による肥満予防も忘れずに行いましょう。

ひざによい姿勢
ひざ全体にバランスよく負荷がかかるようになり、 痛みの軽減につながります。

ひざによい姿勢

ひざにやさしいウォーキングの方法
よい姿勢を意識することで、ひざへの負担が軽くなります。

ひざにやさしいウォーキングの方法

③装具療法

杖や足底板などの装具を使って関節を保護する療法です。

そくていばん
変形が進んだ足には、足が地面につく角度を調整してくれる足底板を利用します。ひざへの体重のかかり方をやわらげ、痛みを軽減させます。

足底板

④物理療法

電気や赤外線を利用して血流をよくする療法です。

●温熱療法
患部を温めて血流をよくすることで、痛みを軽減します。
また、筋肉の緊張をほぐして、ひざを動きやすくしてくれます。
(患部に腫れがあり、炎症で熱を持っているときは、寒冷療法を行います)

温熱療法

⑤手術療法

保存療法では症状が改善されず、日常生活が不自由である場合には、手術を検討します。 こうけいこつこつきりじゅつ と、人工ひざ関節置換術があります。

● 高位脛骨骨切術
骨の一部を切ってO脚を矯正することで、体重がひざ全体にバランスよくかかるようにします。自分の関節を残すので、術後は活動的な生活を取り戻すこともできます。

●人工ひざ関節置換術
症状がかなり進行して、ひざ関節の変形が大きくなった場合に、関節を人工関節に置き換える手術です。 ひざ関節全体に行う方法と、一部だけに行う方法があります。

人工ひざ関節置換術