パーキンソン病は、手や足がふるえるなどの特徴的な運動症状(パーキンソニズムと言います)がみられますが、他の病気でもあらわれることがあるため、運動症状だけでパーキンソン病と診断することはできません。
パーキンソン病の診断は、患者さんのさまざまな情報をもとに、診断基準にもとづいて総合的に判断します。
パーキンソン病の診断の流れ
はじめに自覚症状、服薬状況や病歴など、患者さんの状態について問診を行います。医師は、問診中に患者さんの体の動きや表情などを観察していますが、診察で運動症状を確認します。さらに血液検査などの一般的な検査や脳などの画像検査も行います。これらの結果と診断基準を照らし合わせて、パーキンソン病か、それ以外の病気か判断します。
診断がつかない場合は、パーキンソン病の治療薬を試しに服用し、効果がみられればパーキンソン病と診断します。
パーキンソン病の診断基準
パーキンソン病の診断基準は数多くありますが、現在、日本で広く使われているものを以下に示します。
動きが遅くなったり、小さくなったりすること(寡動・無動)を必須として、手や足がふるえる(静止時振戦)、筋肉がこわばる(筋固縮)という運動症状のいずれか、または両方があることに加え、①絶対的除外基準に抵触しない、②少なくとも2つの支持的基準に合致する、③相対的除外基準に抵触しない、ことを満たしている場合にパーキンソン病と診断します。
パーキンソン病の診断基準1)
パーキンソン病の診断基準は多数ある。下記は日本で広く使われている例。
診断基準例
パーキンソニズムがある
寡動・無動(必須):動きが遅くなったり、小さくなる
静止時振戦:手足などがふるえる
筋固縮:筋肉がこわばり、かたくなる
どちらか
①絶対的除外基準に抵触しない、②少なくとも2つの支持的基準に合致する、③相対的基準に抵触しない、 ことを満たしている場合
支持的基準
このような特徴が少なくとも2つある
- ドパミン補充療法で症状が明らかによくなる
- L-ドパ誘発性のジスキネジアが現れる
- 診察時に手足がふるえている(静止時振戦)
- 嗅覚がなくなっているか異常に低い、あるいはMIBG心筋シンチグラフィで異常がある
絶対的除外基準
ほかの病気の可能性があるので除外する
- 中等度より重症だが、高用量のL-ドパで症状がよくならない
- 画像検査でドパミン系の働きに異常がない
- パーキンソニズムのあるほかの病気の可能性がある
相対的除外基準
このような特徴がない
- 吸気性の呼吸器障害がある
- 5年以上運動症状が悪化していない
- 発病3年以内に年に1回以上転んでいる
- 罹患期間5年で、「睡眠障告」「自律神経障害」「嗅覚低下」「精神障害」がない
日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン 2018」を参考に改変
絶対的除外基準:パーキンソン病ではないことを示す条件
- 服部信孝 監.ウルトラ図解 パーキンソン病. 法研, 2020, pp54-55,58-61,66-67