心不全の治療は、お薬による治療だけではありません
心不全は悪化させないことが重要1)
一般的に、心不全はよくなったり悪くなったりを繰り返し、少しずつ心臓の働きが低下して進展する、という経過をたどります(ステージA⇒Dへ進展する)。心不全は治療を行うことでよくなったとしても、決して「心臓が元の状態まで回復した」ということにはなりません。そのため、いかに「心不全を悪化させないか」について考えていく必要があります。進展予防のチャンスを生かして、積極的に治療に取り組みましょう。
心不全は1つの病気ではありません。様々な原因により心臓の働きが低下した結果、起きた状態です。
そのため治療の原則は、心臓の働きを低下させた原因をはっきりさせて、その原因となっている病気を治療することにあります。
そのため治療の原則は、心臓の働きを低下させた原因をはっきりさせて、その原因となっている病気を治療することにあります。
心不全の治療法3)
まずは、原因となった病気(高血圧、糖尿病、動脈硬化など)の治療から始めて、心不全をこれ以上悪化させないことが重要です。心不全のステージが進展しないように、予防のチャンスを意識して治療に努めるようにしましょう。心不全を起こした後は、症状(息切れやむくみ、倦怠感など)のコントロール、生活の質の改善、入院の予防を目標としていきます。
症状がよくなっても心不全とうまく付き合い、繰り返さないようにしましょう。
心不全の治療は、お薬による薬物療法以外にも様々な治療法があります。医師は患者さんの心不全の状態によって、最適な治療方法を選択して実施します。
- 日常生活の改善(日常生活の過ごし方を見直す)
- 心臓リハビリテーション(食事療法、運動療法)
- 薬物療法(原因となった病気の治療薬、心不全の治療薬など)
- カテーテルを用いた治療(冠動脈インターベンション、アブレーションなど)
- 手術やデバイスを用いた治療(ペースメーカー、除細動器など)
- その他の治療(在宅酸素療法など)
0次予防(1回目)の機会
ステージAに移行しないよう、よい生活習慣を身につけ、健康的な生活を維持して、生活習慣病に注意する。
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1次予防(2回目)の機会
ステージBに移行しないよう、心不全の危険因子(原因となっている病気)を改善する。
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2次予防(3回目)の機会
ステージCに移行しないよう、生活習慣病が進行して発症した心臓の病気を治療する。
薬物治療を開始する。
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3次予防(4回目)の機会
ステージDへの移行を阻止するために、心臓に負担のかからない生活を心がけ、心臓リハビリを継続する。薬物治療も中断せずに継続する。
- 小室一成:よくわかる最新医学「心不全」, 主婦の友社, 2021, pp36-39. を参考に作成
- 「脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る診療提供体制の在り方について」(厚生労働省,2017年)https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000173149.pdf(2023年9月参照)
- 小室一成:よくわかる最新医学「心不全」, 主婦の友社, 2021, pp76-79,82-91. を参考に作成